インタビュー
SMASH代表・日高正博が長らく知るボブ・グルーエン
「こんなカメラポジションで撮れるなんてありえない」
ワールド・ロック・フェスティバルが最初
ボブと最初にあったのは1970年代中頃かな。確かニューヨーク・ドールズの初来日のときなんだけど、ボブはそれについてきていたんだ。それで会ったのがきっかけだね。
あらゆるミュージシャンから信頼される男
「ミュージシャンから信頼されているフォトグラファー」というイメージがものすごく強い。彼の撮った写真を見てもらえればわかるんだけど、こんなカメラポジションで撮れるなんてありえないんだよね。60年代、70年代の混沌とした時代に。たとえば『ROCK SEEN』の中のチャック・ベリーの写真。あれだけ接写できるなんてなかなかない。それから亡くなる前のプレスリー、70年代のストーンズの写真、ツェッペリンの写真……あらゆるミュージシャンから信頼されていたからこそ、あんないい写真を撮ることができたんだろうね。ボブは本当に音楽が好きで、お金を稼ぐために撮ってるという感じがしないんだ。それで、彼は写真を撮るためにどこへでも行くんだよね。人との付き合いをとても大事にしているよ。
一種の化学反応を写し取ったボブの写真
ブルースやリズム&ブルースとカントリーなんかが融合してロックンロールが生まれた。これはもともとは「ROCKしてROLLする」ということなんだけど、言ってみれば、ロックンロールは世の中を揺らす(ROLLする)音楽だったんだよね。アメリカ南部の厳しい環境とそこで育まれた豊かな音楽から生まれてきたのがロックンロール。そんな時代を作った人たち––––マディ・ウォーターズとかチャック・ベリーとかB.B.キングなど––––を含め、写真集や展覧会に写真が使われているミュージシャンたちは、みんな新しい時代を作った人たちで、常に一歩先を行ってたんだ。それも計算しているわけじゃなく、好きなことをやったらそうなってた。つまり一種の化学反応だと思うんだ。それを写したボブの写真を、日本中の音楽が好きな人たちみんなにとにかく見にきてもらいたいんだよ。写真集買わなくてもいいからさ。まぁお金に余裕があれば買ってほしいけど(笑)。
(インタビュー&テキスト 青野賢一)
日高正博
1983年に株式会社SMASHを設立、同代表。1997年にスタートしたフジロック・フェスティバルのオーガナイザー。