インタビュー
GRAPEVINEの田中和将が感じるボブ・グルーエンの魅力
「ニューヨークそのものを切り取ったような写真」
ロックの歴史が詰まっているといっても過言ではない
僕は写真やアートなど音楽以外のことは明るくなくて、ボブ・グルーエンの名前もこれまであんまり意識してこなかったのですが、写真集『ROCK SEEN』を見てみると、知ってる写真がいっぱいあることに驚きます。ジョン・レノンの写真はもちろん、僕らが通ってきたビートルズ、ストーンズをはじめロックの歴史が詰まっているといっても過言ではないですね。そうした人たちから最近の人たちまでカバーしていて、改めてすごいなと思いましたね。エルヴィスやリトル・リチャード、マディ・ウォーターズまで入っているのはなかなかないですよね。
ボブの人柄あっての柔らかい表情
今だとインターネットやSNSでいろいろな情報が得られるんだと思うんですけど、昔のミュージシャンたちはこういう写真を通じてファッションや雰囲気を味わっていたんじゃないですかね。ニューヨーク時代のジョン・レノンの写真は有名ですけど、それ以外のミュージシャンたちのオフ・ショットもみんな柔らかいいい表情をしていますよね。ボブ・グルーエン本人も人柄がよさそうで、そんな人柄あっての写真なんでしょう。この人じゃなければ撮れなかった写真だと思います。写真集を通して見ていくと、ジョン・レノン、ポスト・パンクの人たち、CBGBでの写真なんかがあって、最後の方にニューヨークへのラブソングを唄ってるライアン・アダムスが出てきますよね。それだからか、この一冊まるまるニューヨークを切り取ったような印象が残ります。ランドマークっぽいものをさりげなく入れて写していても、それが嫌味じゃないところがいいですね。
ヴィジュアル版ロック百科事典
70年代あたりのロックを聴いてきた世代にはたまらないと思うんですが、若い人たちが見てもきっと面白い展覧会だと思うんです。どんな世代の人が見ても、同じような気持ちになるんじゃないでしょうか。いい音楽がずっと聴き継がれていくように、こういった写真も受け継がれていってしかるべきだと思いますね。写真集『ROCK SEEN』も、のちのち今の若い人たちにとってもバイブルになり得る写真集だと思います。まさにヴィジュアル版ロック百科事典。家にあったら財産です。
(インタビュー&テキスト 青野賢一)
田中和将
GRAPEVINEのボーカリスト/ギタリスト。全曲の作詞も手がける。バンド名はマーヴィン・ゲイの「I heard it through the grapevine」から命名。1997年9月、ミニ・アルバム「覚醒」でデビュー。デビュー20周年を迎える今年、ユニコーンからOGRE YOU ASSHOLEまで多彩なゲストを迎え対バン・ツアー「GRUESOME TWOSOME」を開催。ニュー・アルバム「ROADSIDE PROPHET」を9月にリリースする。HP http://www.grapevineonline.jp